測位航法学会 全国大会セミナー参加メモ

本日、測位航法学会全国大会(2019年度)セミナーに参加したのでメモを書きます。 参加者は企業や学術関係と思われる社会人が多かったですが、できれば将来のエンジニアや研究者の卵である学生にも参加してもらいたいなと思いました。自分が学生の時にこういうのがあれば良かった思う一方で、講師として頑張られている鈴木先生、細井先生に刺激を受けました。

GNSS信号処理概要とSDRによる測位実習

GPS受信機が衛星信号を受信するしくみについての解説と実習が行われました。 GPS信号について書籍では勉強していましたがGPSのSDR(software defined radio)を触るのは初めてなのでした。

以前、ブログなどでTVチューナを用いてGPS信号をトラッキングする記事を読んだことがありましたが、そこでは工作などノウハウが必要そうなので敬遠していました。 今回紹介されたRTL-SDR.comは、bias-T(アクティブアンテナに電源を供給する部品)が付いていて、クロックもTCXOで以前のものより安定し、USBで挿せばそのまま使える優れモノでした。

実習ではドライバのインストール、RF信号の保存、鈴木先生のSDRでのGPS信号の補足(ファイル入力、リアルタイム処理)、RTKLIBによる測位計算、まで行われ、アシスタントともに丁寧に参加者をサポートされていました。私はWindows10, ASUS ZenBookを利用していましたが、問題なく動きました。typeCの端子につないだUSB3.0のハブにRTL-SDRを挿しましたが、認識、動作とも正常でした。実習では東京海洋大学の屋上GPSアンテナから引き込んだものを教室で輻射したいましたが、とても信号が強いらしく、信号強度を表示するUIの上限(60dB?)を越える衛星もありました。疑似距離が異常なのか、測位計算で残差の検定のエラーが出ていました。

最後の質疑応答でSoapySDRが紹介されていました。 SoapySDRをネットで検索すると、日本語の記事はこちらのブログ くらいしか見つかりませんでした。日本語の情報が足りてないこと、まだまだたくさんありますね。

衛星測位と地図情報

このセミナーは、当初は地理院地図の使い方などの話し方と思って受講申し込みましたが、想像と違い、内容は予想以上に面白かったです。いろいろ「へー」と思うことがあったのですが、為になったのは地図のための座標系と衛星測位計算の座標系の関係を、解説いただけたことです。(理解したとは言えない、、、^^;)

地殻変動が起き、道路も建物も地上にあるものは日々移動しています。一方で、地図は地殻変動しません。そのため、測位結果を地図上にプロットして利用する場合には地図に合わせこみを行う必要があります。でないと、GPSでの測位結果が精密であっても、地殻変動の影響により地図にプロットするとずれる、ということが問題になります。という話と理解しました。

講義の中で何度もJGD2011(日本測地系2011, Japan Geodetic Datum 2011)という用語が出てきました。このときの地図を基準にして地殻変動を補正する方法が、国土地理院からセミダイナミック補正で、補正に使用するパラメータは各年のものが提供されています。セミダイナミック補正を利用しなくても自分でずれを補正できるのではないか、と思いましたが、最後の質疑応答で、講師の方からそれが可能である、と解説されていました。電子基準点のF3解が公開されているので、対象地点周囲の地殻変動は計算できるので、そこから衛星測結果の移動量も計算できる、と理解しました。(合っているかなー^^;)

測地系についての解説も前半にあり、なかなか複雑で着いていけませんでした。(涙) WGS84GPSの測位計算で使用されている世界測地系, world geodetic system)とITRF(international Terrestial Reference System)の変換は、公式の座標変換パラメータは存在しないが、cmレベルで一致しているそうです。世界測地系は、クエーサー(Quasar、宇宙のはるか彼方にある点光源とみなせる恒星)からの信号を地上のVLBI(Very Long Baseline Interferometry)による測位計算の情報とTRFを合わせて作る??ようです。少し古いですが、日本が世界測地系に初めて(?)移行したJGD2000 のときの解説「世界測地系移行に関する質問集」国土地理院のページにあり詳しいです。

測位結果の評価(「位置の品質評価」)の解説では、CEP(Circular Error Probability) とDRMS (distance root mean square) の解説がありました。CEPをいままでよく理解できていなかったのですが、今回もいまいち理解が追い付かず自分の課題として思い出しました。自分の宿題が多いな。


どちらのセミナーも2時間30分という時間に、内容が濃くまとめられていて良かったです。来年も開催されるならば、関係するエンジニアだけでなく、興味がある程度の人も参加されると面白いと思います。